茶々のヒューマンウオッチング

ライン

■■打ち明け話 U章■■

猫

 年が明けて小学生だったぼっちゃんも中学生になった。
わたしもいつまでも子猫のままではいられない。そうなうと気まぐれなネコ族の性分で
家にいてかかわってこられるのもいやなので、おばあちゃんの家で過ごすことが多くなった。
ぼっちゃんは夏休みまでは私に会いに来ていたのだけど、ここしばらく来なくなった。

 様子を見に久しぶりに家に帰ってみた。
家はひっそりとしていて、ママも仕事に行ってるらしく縁側も開いていない。
周りをぐるっと回ってぼっちゃんの部屋の前でひと泣きしてみたが反応がない、もうひと泣きしてみる。
「ニャ〜オ」
窓が開いて坊ちゃんが顔を出した。
「茶々か、おかえり〜」
あれ?いつもの声と違うぞ。ぼっちゃんの声が変わってる。
何となく顔つきも変わってきたようだ。体も前より大きくなったかな?

「ほら、おいで」
坊ちゃんが窓を大きく開いてくれたのでそこから家に入ると、 何となく雰囲気が違うのを感じた。
なんだ?この空気は・・・・ 病気でもなさそうなのに寝ていたのかな?
「茶々おなかすいてるんじゃない?のどかわいてないか?」
ぼっちゃんはいつものように私を抱き上げて頬ずりをしながらキッチンに行きわたしを下ろすと
冷蔵庫をあけて牛乳をとりだし、わたしの皿と自分用にコップに注ぐとテーブルに置いてあるお弁当をもって居間に入った。
その中からおかずを分けてくれた。大好物の魚だ。これはパパさんが釣ってきたものじゃないな。
おお、ベーコン入りのチャーハンもうまいうまい・・・・。
喉を鳴らしながら食べている私をうれしそうにみながら、ぼっちゃんも食べている。

 ぼっちゃん学校に行ってないのか?
『どうしたの?何で一人なの?』
カラになった皿をなめ終わると、坊ちゃんに声をかけてみた。
私の猫語がわかるはずないんだけど、ぼっちゃんがポツリと
「茶々が帰ってこないと僕は一人ぼっちだぞ。学校もつまんないしな〜」
と返してきた。
「夏休みが終わってからしばらく行ってたんだけど、うるさいやつらがなんやかんやいってくるし、
宿題が終わってなくて毎日居残りだし部活だって出来ないんだもん。だんだん行くの嫌になっちゃったんだ」
食事が終わるとそのまま横になってあまり口を開かないぼっちゃんが私を相手にしゃべりつづけている。
なんだなんだ、ぼっちゃんどうしちゃったんだい?

「ママが言うことも先生がいうことも、全部わかってるんだけどね、どうしても足が動かないだよ、
夜には明日は行くぞって思うんだけど、朝になるとだめなんだ。 かまわれたくないんだよ、茶々わかるか?」
「にゃ〜ん」
わかるわかる、私だってむやみやたらにかまわれたくないよ。
「そうか、茶々は僕の気持ち分かってくれるんだね」
さっきからずっとかまわれ続けている私としては人間て勝手な生き物だと思う。
かまわれたくないと思っているぼっちゃんがかまわれたくない私をかまっているんだから・・・・
「ああ〜僕も猫だったらいいのに、茶々は自由にどこにでも行けるもんな。」
そういいながらぼっちゃんは大きくため息をついた。

 居眠りを始めたぼっちゃんの横でわたしも寝ることにしたのだがさて、どうしたもんだろうな。
これは、しばらくここにいてやらないといけないかも知れないな。

 夕方になるとお姉ちゃんとママが帰ってきた。
「ただいま〜」
「おかえり・・・・」
ぼっちゃんは小さい声で返事をしたが聞こえなかったらしい。
「へんじくらいしたら、ママがおやつ買ってきてるから出ておいでって」
お姉ちゃんがドアを開けながらいうと
「なんで勝手に開けるんだよ。」
嫌そうにぼそっと一言いうと睨んでいる。
「なによ、あんただって私の部屋に勝手に入ってくるじゃない。ふん!」
怒ってドアをバタンと閉めた。
あれあれ、あんなに仲良しだったのに、なんかお姉ちゃんもぴりぴりしてるのかな?
「部屋んなか閉じこもってないでこっちにいらっしゃいよ」
向こうの部屋からママが叫んでる。
怒ってるお姉ちゃんをなだめていたんだろう。カリカリしてるのがわかる。
こういう状況を作ったのはぼっちゃんだけど、でていきにくいだろうな。本当に人間社会は厄介だ。

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