茶々のヒューマンウオッチング

ライン

■■作戦開始 X章■■

猫

茶々がどのポジションにいるのか、空地には数匹の猫が集まって来ていた。

「今日集まってもらったのは、 私のご主人を猫世界に招待するという計画を実行するためです。」
と、茶々が話し始めると毛づくろいをしながら
「この世知辛い時代に人間を猫世界に招いて大丈夫なのかい?
一匹増えるってことはその分食糧が減るってことだろ。」
年長のタマばあさまが面倒臭そうに口を入れた。
「わたしはそういう世界を見せてやりたいんです。
ぼっちゃんには生きることの厳しさを教えてやらないといつまでも甘えてばかりだから」
「そういうお前さんだって半分は飼い猫じゃないか。本当の厳しさなんかしっちゃいないだろう」
「今はそうだけど、私は親とはぐれた後、何日もひもじさと頼るもののないさみしさをあじわいました。
ふらふら歩いてて車にあたって死にそうなところを坊ちゃんに助けられたんです」
茶々が必死に身の上話をするとタマばあさまはやっと重そうな体を持ち上げて
「ほう、その子を猫世界に招くことはお前さんの恩返しってことなのかい?」

板ギレの上で居眠りしていた野良猫のクロが目を閉じたままで
「人間に恩返しの手伝いなんてやなこった。
おいらはそのぼっちゃんとやらが猫世界に来たら思いっきりいじめてやるぞ」
すると、茶々のまんまえで話を聞いていた飼い猫のマノンが
「そんなことしたら私が許さないわよ。」 ふわふわの毛を逆立てながら銀色に光る目でクロをにらんだあと
「いいんじゃない恩返し。
私だって娘のように可愛がってくれる飼い主のために人間の娘になってお役に立てたらって思うもの。」
そういうと 「私、明るいうちなら一緒にいてあちこち連れて歩いてもいいわよ。」

 マノンを好きなのに相手にしてもらえないでいるクロは
「道案内はおいらも付き合ってやるよ。
飼い猫のマノンが野良と間違われて人間にいじめられるの見たかねえしな」
と、しぶしぶマノンのボデイガードをかって出た。
「二人ともありがとう。」
茶々はそういうと今度はタマばあさんに向きなおって
「今、ぼっちゃんは眠っています。家族はみな出かけました。これから私と一緒に行って呪文をかけてもらえますか?」
そう頼んだ。

「あれは、長いこと使ってないからどうなるかなるかわからないけど、
それにだいぶ体力を使うからねえ、その前に何か食べさせておくれよ」
そういいながらタマばあさんがまんざらでもないようにゆっくりと身体を動かし立ち上がると。
茶々は
「わかりました。私についてきて下さい」
とタマばあさんと一緒に老婦人の家に向かった。

ホーム

[PR]動画