茶々のヒューマンウオッチング

ライン

■のら猫クロの本性■ [章■■

猫  空地に置いてある木箱の中から飼い猫のマノンが出てきて
「あらこのこなの?かわいいじゃない」
というと、裏のほうから野良猫のクロが眠そうなこえで
「まったく、なんてこった。めんどうなもんしょいこんじゃってよ〜」
あくびをしながら顔をのぞかせた。

 茶々は二匹の言葉を無視して猫になったぼっちゃんを紹介したした。
「今日から仲間になるサスケだ。ご存じのとおり猫社会のことは何もわからないから、
いろいろと厄介掛けると思うけどクロもマノンもよろしく頼むよ」
サスケと紹介されたぼっちゃんは人間社会では出したこともないような元気な声で
「初めまして、よろしくお願いします。」
そう挨拶をして
「僕が人間だったってことクロさんとマノンさんだけは知っていてくれると聞きました。
最初は何もわからないから皆さんにご迷惑かけると思いますが、一日も早くなれるように頑張ります。」
 マノンが 「あら、かわいい。大丈夫よサスケ君、きょうから私をお姉ちゃんだと思って甘えてちょうだい」
そういうと、クロは鼻でせせら笑うように
「全く飼い猫には世間のきびしさが全然わかってないんだから、わらっちゃうぜ。」
吐き捨てるようにいったあと、サスケに向かって
「おい!おまえな〜、おれさまが今日から、みっちりおまえを野良猫に仕込んでやるから覚悟しとけよ。」
とすごんでみせた。

 その勢いに一瞬サスケがひるむと
「まあまあ、しばらくはわたしがサスケの面倒は見るから二人にはいざという時の助っ人になってもらいたいんだ」
茶々が空気を変えるように言うと
「いざってのはなんだよ」
またクロが絡んできた。となりでマノンが呆れた顔をしなが
「まったくあんたって、どうしょうもないわからずやね・・
そういうと、茶々に向かって
「助っ人って私は何をすればいいの?」
と尋ねた。
「まずマノンには食事にありつけなかった日に家に連れて行って食べさせてほしい。
いつもってわけにはいかないからそれは私と交代でやろう。
クロには私がいないとき、ほかの連中に絡まれたりしてたら助けてやってほしい」
茶々が役割分担を話し終えるや否や
「なんだよ、この世界に連れ込んでまでお前はこいつを甘やかすつもりかよ」
そうくってかかった。
 サスケはついさっきまで鳴き声しか聞こえなかったのにすべての言葉がわかり、
自分のことを話しているとはいえ深く感動していた。

「ところでタマばあさんはどうしたの?」
マノンが聞いてきた。
「タマばあさんはぼっちゃんの姿に化けて、しばらくあの家で暮らすことになった。
もうそろそろ家族が帰ってくるからわたしも様子を見に行かなきゃいけないんだ。」
茶々がいうと、
「あら、そうなの?猫が人間に化けるって話ほんとうだったのね。
私ももうそろそろ帰らないと暗くなったらご主人が探し始めるわ。」
マノンがそわそわしながらクロに助けを求めている。
「ほらな、だから飼い猫はあてにならないんだよ。
おい、サスケ!
おまえも今日から野良猫のなかまになったんだ。飼い猫なんかあてにしてちゃおまんまの食い上げだぞ」
クロはマノンに憎まれ口をききながらも、頼りにされたと思って サスケの面倒を引き受けた。

 茶々とマノンがいなくなると、クロはサスケにこれまでとは違うやさしい声で話しかけてきた。
「どうだ、人間から猫になってみて怖いと思わないのか?お前が今まで見ていた景色が全然違うだろう。
人間にとっては何でもないことが猫社会では命がけなんだぞ」
「わかりますクロさん。僕はさっきここに来る前に自転車にひかれそうになりました。
いつもなら、軽くかわせるのに自転車も人間もとてつもなく大きくて、その前を走りすぎるのにひっしでした。
ぼく、怖くて怖くて、震えていたら茶々が飛んできて怒られました。」
サスケがそういうと
「そうか、もう怖い思いを一度はしたんだな。
まずそれが一番気をつけなきゃならないことだ。野良猫一匹はねられても何の問題にもならねえし、
死んでも誰も心配するもんもいねえ。飼い猫なら飼い主が病院に連れて行って手当をしてくれるし、
死んでも飼い主に墓でも作ってもらえるだろうが、俺みたいなのは雨ざらしになって干からびてもそのまんまだ。
たまはに道の脇に寄せてくれる人間や保健所に連絡してくれる人間もいるみたいだが
そんなのは万に一つ・・・・・猫社会はそんな甘いもんじゃない。」
クロはサスケに現実の厳しさを淡々と語り始めた。サスケは黙って聞いている。

 「次の問題は腹ごしらえだ。
これには縄張りがあってな。自分の縄張りにほかのやつが入り込んできたらそこでけんかになる。
こっちの縄張りに食糧がなかったら仕方がないからよその縄張りで探さなきゃならない。
またそこでけんかになる。毎日が命がけなんだぞ。おまえそれでもいいのか?いまならまだ、まにあう。
家に戻って玉ばあさんに魔法を解いてもらうこともできるんだぞ。」
 サスケは目の前にいるクロ優しさが胸にじんと来ていた。
『みんなの前ではひねくれ者を演じているけどほんとうはとても優しくて強いんだ。』
そう思うとのら猫のクロと一緒に冒険してみたくなった。
「クロさん、ぼくを弟分にしてください。いま、教えてもらったこと自分で体験して強くなりたいんです。
自分で納得できるまで家には帰りません。」

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