続 愛の詩集

ライン

■■〜長い一日・・・そして〜■■

最終便到着までの時間はまだたっぷりある。
「さてこれからどうしよう」
遠距離 確信のない約束 連絡の取れない状況の中で
清香は身の置き所、心の置き所のない状態で駐車場のほうに向かって行った。
必ず帰ってくるのなら何をおいても
仕事を休んででもその時間を待っただろう。
「仕方ないじゃない。私が送り出したんだもの。
それに彼は私のために頑張ってる。もし駄目でも待っててあげなきゃ」
車のエンジンをかけながら独り言をつぶやいて空港へと向かった。

 何便の離着陸のアナウンスが流れたのだろう。
清香はついてすぐ喫茶店で軽く食事をし
といっても殆どのどを通らずにでてしまったのだが
その後空港ロビーの椅子で先日買った小説を読みながら時間を過ごした。
いや、殆どページはすすんでいない。
周りを見渡すと人の姿もまばらになり、長い時間座り込んでいる自分を
通り過ぎる人たちや空港関係者が
けげんそうに見ていくのを感じていると
拓也が乗ってくるはずの最終便のアナウンスが流れた。

 清香はそのままじっと座ったままでいる。
到着口に出迎えに行ってもしでてこなかったら
そう思うとそのときの落胆する自分が悲しくて
立ち上がる事も出来なかったのだ。
そうしながらも時計を見て 
「今は何所 もうすぐあそこ もう荷物置き場」
と、自分の前にたどり着くまでの経路を目で追っている。
目を閉じて祈るような思いで待っていると
ざわざわと人のざわめきが聞こえてきた。
幾つもの足跡が通り過ぎ、その音がまばらになったとき
清香の前で足音が泊まった。

「最終便がつきましたけど。」
清香がぱっと目を開いて見上げると
「ただいま、飛行機の中で眠り込んでしまって一番最後になっちゃったよ」
満面の笑みをたたえて拓也が立っていた。
清香は言葉も出せないまま立ち上がって拓也に抱きつき
はらはらとただ涙を流し
拓也もまた旅行カバンを床に落とし、清香を力強く抱きしめ合えた喜びを
お互いの匂いと感触で確かめ合うように暫くの間離れる事ができずにいた。

 「おかえりなさい」
清香が瞬間的な行動に恥じらいながら声を出せたのは
しゃくりあげる鳴き声が途絶え
拓也が回した腕の力を弱めて体を離し肩に手をかけたときだった。
「ここで待っててくれたんだね。着いたら電話しようと思ってたから
さやの姿を見たときびっくりしたよ。長い事待たせたんだろう?」
長身の拓也が清香の顔を覗き込んだ。
「ううん、会社から直接ここに来たけど本読んでたから。
不安だったけどここで待ってたら絶対帰ってくるってそんな気がして」
二人はお互いの瞳を見つめあいながら
お互いの心が繋がっていることを確認しあっていた。

 暗くなった駐車場に着くとどっちが運転するかという事になった。
「これからどうする?」
拓也が聞いた。清香はクスッと笑って
「同僚の裕子ちゃんと旅行にいくの」
と答えると一瞬、
眉をしかめ睨むような顔をして見せながらその後嬉しそうに
「悪い娘だ。
仕方ない僕が運転してその裕子ちゃんの家に送ってあげよう。」
といいながら清香の手から鍵を取り上げると運転席に乗り込んだ。
「えっ?」
冗談が通じなかったのかと心配になった清香が
戸惑いながら助手席に乗り込み拓也を見つめると
「ただし 送り届けるのは二日後かな」
といつもの悪戯っぽい顔で笑っている。
「も〜・・・・・いじわる」
頬を膨らませて睨みつける清香に拓也が顔を近づけてきた。
「ん・・」
突然のキスに一瞬硬直してしまった清香もいつか
安堵し陶酔しそして求めていった。

長い時が流れたような気がした。
どちらからともなく唇を離し
「3ヶ月ぶりのキスごちそうさま」
拓也は照れくさそうに顔をそらしエンジンをかけた。
「おいしかった?」
すかさず清香がたずねると
「絶品。余は満足じゃ」
と笑いながらしたなめづりをして見せて
走り出した車の中で手を伸ばし清香の手を握り締めた。
「はやくふたりっきりになりたい」
そうつぶやきながら・・・・・・・・

 清香も同じ思いだった。
奇跡のような再会の喜びと 変わらない拓也の愛に包まれて
体中が熱くほてっている。
「何も考えずすべてをこの人に任せよう。」
この体験とこのときの感情が清香に
どういう状況になっても拓也を待ちつづける事への確信となり
何があっても動じる事のない信頼になっていったのだ

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