続 愛の詩集

ライン

■■〜愛の道しるべ〜■■

拓哉はそのまま島に帰っていった。
合格通知が届くまでは退社届もだせないので、
社内の誰にも親にさえも言わずに来ていた。
「10日後にはわかると思うけど、はっきりするまで連絡はしないよ。
さやにはぼくを信じて待っていて欲しい」
そういい残して試験場に向かったのだ。

 清香はいつものように起き会社に向かい、
いつものように同僚と食事をしたり習い事に通ったり
長い長い1日を繰り返していた。
心の中にある不安や寂しさは、
夜眠る前にノートの中の拓哉が癒してくれていた。

「一人ぼっちは悲しい事でも
 薄ら寒いことでもない。
 待つ人のある孤独は
 帰る所のある旅のようなもの
 それ自体を楽しみ
 次の幸せをつかむステップ

 さや・・・・
 君との生活で それを知りました。
 たとえもし
 僕の生命があといくばくも続かないとしても
 僕は何よりもきみを愛したい。
 たとえそのことで
 きみに不幸を背負わせるとしても
 僕の生命はきみの中でしか
 燃えないから

 人はいつか
 愛し合った事を忘れるかもしれない。
 愛憎のつらさを引きずっては
 誰も生きていけないかもしれない。
 だけど
 その一瞬の愛しさは
 永遠につながっていく。
 そう、一瞬一瞬の積み木が
 宇宙まで続く世界を築く。
 そしてその一瞬の中に
 ミクロの世界の広がりがある。

 さや・・・・
 きみはこの瞬間に
 二人の世界を見つめますか?
 明日からの二人の道しるべを・・・・」

最終ページに書かれていたのは、プロポーズの言葉だった。
清香は今はただ愛する人のこれからを静かに見守り、
信じてついていけばいいのだと思った。
「誰にも先の事はわからない。
ただ拓哉は私を幸せにしたい、だから挑戦する
そういってくれたんだもの」
呪文のようにその言葉を繰り返し拓哉からの連絡を待っていた。

ライン

その日はなぜか朝からうきうきと気分がいい。
清香は久しぶりに母君江より先に目を覚まし朝食を作った。
「あらあら、どうしちゃったの?こんなに早く」
君江は驚いて起き上がろうとした。
「気分いいから早くに目がさめちゃったのよ。
準備できたら起こすからゆっくり寝てていよ」
清香がそういうと君江は安心してまた眠りに入ったようだ。

 昨夜遅く 拓哉から電話があった。
「もしもし さや。遅くからごめん。今日出張から帰ってきたんだ」
「大丈夫よ。何だ出張だったんだ。どのくらい行ってたの?」
「いつもと一緒 一週間だよ」
「そう 元気だったの?」
「ああ、ずっとさやの事考えてたよ」
「私もずっと拓哉のこと思ってたよ」
清香は結果が出たかどうかを聞きたくてたまらなかった。しかし

「出張も最後になるかな。いやもう一度くらい行く事になるかもしれないな〜」
拓哉はもったいぶった言い方をしながら清香の反応をみているようだ。
「さや、もし今度、出張があったら来ないか?
小さいけど、のどかな島で、さやに見せてあげたいといつも思ってたんだ。」
「えっ、いっていいの?嬉しい!
拓哉がいってた海の見える露天風呂とか牛さんが入り込んでくる滑走路とか
一度、実物をみてみたいと思ってたんだ〜」

 清香の気持ちが変わったところで拓哉は静かに話し出した。
「さや 今日帰ってみたら通知が届いてた。合格だ。
3日後にまたそっちに行く事になったよ。
面談とそこで研修資料が渡されるらしい。
だいぶ厳しい研修だから最終確認をするって書いてあった。」
「そう、おめでとう。受かったんだね、拓哉がんばったんだ」
清香はあふれ出てくる涙を指先でふきながらそういうと
「ありがとう さやのおかげだよ。
君に出会って、君を愛して、きみを幸せにしたい。
って思った事がぼくに目標と希望をあたえてもらった。
今回の事で自信がついたよ。
だからね、ぼくはこのままつっぱしろうと思ってる。
君にはもっと寂しい思いをさせるかもしれないけどついてきてくれるかい?」
「うん ずっとあなたのそばにいる」
清香にはもう迷いは無かった。気持ちは拓哉と一緒だったからうなずきながら
どういうことになっても反対はしないと心に誓った。

ライン

次へ

[PR]動画